傍観者効果とは
傍観者効果(Bystander effect)とは、周囲に多くの人がいることで、行動が抑制されてしまう現象のこと。人が多ければ多いほど強い傾向がみられます。
アメリカの社会心理学者であるビブ・ナタネとジョン・ダーリーは、1964年にニューヨークで発生した「キティ・ジェノヴィーズ事件」についてある仮説を立てました。
自分じゃない誰かが行動するだろう。そう感じちゃうよね。
みんながそう感じると、誰も行動しないという結果になっちゃうでしょ!
キティ・ジェノヴィーズ事件
傍観者効果を語る時に必ず挙げられるのが、ニューヨークで発生した殺人事件「キティ・ジェノヴィーズ事件」です。
1964年3月。深夜、自宅に帰宅途中のキティことキャサリン・ジェノヴィーズ(29歳)が、暴漢に襲われてしまい命を落としてしまった事件です。
暴漢に襲われたキティは、大きな叫び声で助けを求めました。
この叫びにより、周囲の集合住宅に住む合計38人が事件に気付きましたが、誰一人彼女を助けようとはせず最悪の結果になってしまったというものです。
当時のマスコミはニューヨークに住む都会人の冷淡さを批判しましたが、社会心理学者ビブ・ナタネとジョン・ダーリーは、ある仮説を立てました。
多くの人が気付いたからこそ、
Darley, J.M.; Latané, B. (1968)
誰も行動を起こさなかったのではないか。
都会人は冷たいのか?
この捜査が進むにつれ、多くの住民が自分以外の住民も事件を目撃していることに気づいていたことが分かりました。
よって、「キティ・ジェノヴィーズ事件」は、冷淡な人が多いニューヨークだから発生したものではなく、多くの傍観者がいたために発生した悲劇と言われています。
しかしながら、一般的に都会には人が多いため、ニューヨークという大都会ということも間接的にこの事件に関係しているとも言えます。
傍観者効果のメカニズム
傍観者効果は、社会心理学的な現象であり、いくつかの要因によって引き起こされます。
責任分散:
多くの人がその場にいると、誰か一人が行動を起こす責任感が薄れます。他の人が何かをするだろうと期待することから、自分が行動する必要性を感じにくくなります。
多元的無知:
他者が積極的に行動を起こさず、目の前で起きている事象を受け入れているため、事態は緊急性を要しないと判断してしまいます。
評価懸念:
なにか行動を起こした時、その結果に対して周囲からのネガティブな評価を恐れてしまう心理が働きます。なにもしなければこの不安は発生しません。つまり「事なかれ主義的」な心理です。
情報過負荷:
人数が多いと、自分がどのような役割で行動すべきなのかという判断が遅れます。他人の反応や期待を気にする余裕がなくなり、結果として行動が後退する可能性があります。
傍観者効果が発動しにくい仕組みづくりを
傍観者効果は、危機的状況や緊急時の援助行動に限らず、あらゆる行動が抑え込まれてしまう可能性があります。
例えば、会議やグループ討論において、傍観者効果が働くと、個々のメンバーが積極的な発言を控えてしまうことがあります。他の人が何を言うか待ちながら、自分は発言しづらくなるのです。
こんなときは、会議や討論の進行役の力の見せどころです。
お題を変更したり、視点を変えたり、時に名指しで質問を誰かにぶつけたり。
優れた司会進行役は、あらゆる手法を使って会議を活性化させようと試みますよね。
「キティ・ジェノヴィーズ事件」のような悲劇も、傍観者効果が人間の心理に深く根付いているものである以上、行動を起こさなかったことを非難することはできません。
それよりも、地域住民同士のふれあいを奨励したり、救助訓練で緊急時に備えたり。
あらゆる手法を使って、傍観者効果が発動しない仕組みを作り上げることが重要です。
(参考文献)
Bystander Intervention in Emergencies: Diffusion of Responsibility Darley, J.M.; Latané, B. (1968). Journal of Personality and Social Psychology
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