カウンタークロックワイズ研究とは
カウンタークロックワイズ研究(Counter Clockwise)とは、心と体の若返りについて調べた研究のこと。
ハーバード大学の社会心理学者エレン・ランガー教授によるプロジェクトで、時間の逆行的な認識が人の心身の健康に及ぼす影響を調査したものです。
具体的には「過去を思い出し、それを再現することで若返りの効果が得られるのか」という仮説に焦点を当てています。
心が若いと、体も若いの?
心だけ老け込んだ子供って嫌だな・・
老人ホームを1950年代風にリフォームした結果
カウンタークロックワイズ研究の興味深い報告の1つに老人ホームをリフォームした調査があります。
75歳以上の高齢者が入居している老人ホームを、彼らが輝かしい時代を送ったであろう1950年代風にまるごとリフォームしたというものです。
このリフォームでは、施設の中のインテリアは当時のアンティーク家具で揃え、そこにあるテレビやラジオには当時の番組を放送。ジュークボックスからはお決まりのオールディーズが流され、新聞も1959年のものでした。ついでに入居者に当時の写真を使ったパスポートまで準備する徹底ぶりでした。
つまり、1950年代にタイプスリップしたかのような完璧な環境を再現したわけです。そしてこの環境で、老人たちの健康にどのような影響があるかを調べました。
気持ちが若くなれば、体も若返るのではないかとの仮説を立てたわけです。
そして、わずか1週間で驚くべき結果が現れます。
老人たちは個人の差はあれど、なんと視力、握力が向上し、彼らの姿勢すら改善の傾向が見られました。
「自分なんて・・」心が老化を加速させる。
研究を進めたエレン・ランガー教授は、環境により気持ちが若返った老人たちは主体的に行動する機会が増加したため、このような結果が導き出されたと示しています。
どうやら、心と老化には大きな関係性があるようです。
「私はもうオバサンだから・・」
「俺みたいなオッサンは・・」
そんな自虐的なメンタル状態こそが、本当に老化を加速させてしまう。
常に若々しい気持ちで毎日を過ごすことが、若さを保つ秘訣なのかもしれません。
生きがいが長寿に繋がる
なお、このような望ましい環境を作らなくとも、例えば、老人ホームの入居者自らが観葉植物に水をあげるのか、それともお世話している人が水をあげるのか、ここにも大きな違いがあるとエレン・ランガー教授は述べています。
観葉植物への水やりを日課にしている老人は、他の老人と比べて2倍近く死亡率が低かったというデータも存在します。
これは、自分でコントロールできるなにかがあれば、それが「生きがい」となり長寿につながるということを示しています。
そして、それを証明するかのように、カウンタークロックワイズ研究には結末があります。
1950年代の環境で活き活き過ごした老人たちでしたが、この研究が終わると老人ホームは元の環境に戻されてしまいました。
すると、入居者の老人たちは1人、また1人と亡くなっていきました。
若返っていた気持ちが、元の老人ホームに戻ったことで再び老人マインドになったことが関係しているように思えますが、それよりも自分の「生きがい」が奪われたことでメンタルに悪影響を与えたと考えられています。
(参考文献)
エレン・ランガー「ハーバード大学教授が語る 老いに負けない生き方」桜田直美訳, アスペクト, (2011)https://amzn.to/4alxHo9
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