接種理論とは
接種理論(Inoculation theory)とは、微量の病原菌を体内に取り込み抗体を作るワクチンのように、あらかじめネガティブな情報や想定外の事柄に触れておくことで、実際に困難に直面しても動揺せずに乗り越えることができるとした理論のこと。
アメリカの社会心理学者ウイリアム・マクガイアが提唱しました。
備えあれば、なんとか・・ってやつ?
備えることで、思った以上に信念が強化されるんだ。
ネガティブな情報に触れておく大切さ
接種理論について、いくつかの例を挙げてみましょう。
想定問答でプレゼンを乗り切る
反論を事前に予測し、問答集を作成しておくことで、プレゼン当日にそれ以外の反論が出たとしても冷静に対処できる。(反論に対し免疫力があるため)
娘の彼氏がおかしな男ばかり
長女が彼氏を両親に紹介しようと自宅におかしな男を連れてきた後ならば、次女がこれまたとんでもない男を自宅に連れてきても案外なんとかなる。(両親がおかしな男に抗体ができたため)
なんか不潔
食べカスで散らかっている人の席をみたが、自分がゴミ屋敷に住んでいるせいかあまり気にならなかった。(もともと不潔な環境に耐性があったため)
あらかじめ説明しておく
ホテルや旅館に宿泊する時、担当者が避難経路を説明してくれることがあります。それにより本当の非常時に冷静に避難することができます。(非常事態に対する免疫が付いたため)
つまり、あらかじめネガティブな情報に触れておくことで、多少のことに動じなくなるということです。
不思議なのが、例えば上記のプレゼン想定問答の場合、あらかじめ想定したものと同じ反論が、プレゼン当日に発生するわけでもないにも関わらず、なぜだかその場を乗り切れてしまうところです。
2つ目の例の、姉妹揃って変な彼氏を家に連れてきたケースにおいても、1人目のとんでもない男と2人目のとんでもない男は、異なる属性のおかしな点を持っているはずです。それでも両親は免疫がついて後から訪問した妹の彼氏にも寛容になります。
これは、初回接種(想定問答、姉の彼氏)に打ち勝ったということが、信念を強くし、オープンな考え方ができるようになるためだと言われています。
コミュニケーション戦略として
接種理論の重要なポイントは、他者の異なる意見や情報に対して耐性を築くことです。
これにより、個人はより強固な認識を構築し、他者の説得に対しても強くなります。特に政治的な議論や意見の対立が激しい状況で、接種理論は有効なコミュニケーション戦略となり得ます。
STEP1 弱い情報の導入
相手の反論や態度に対抗するために、まずは弱い形のネガティブ情報を導入します。これは相手を挑発するのではなく、穏やかに提示することが重要です。
STEP2 反論の強化
弱い情報に対して、自らの信念や態度を強化するための反論を構築します。これは相手の主張に対して論理的な説明や根拠を示すことで、自らの立場をより強く印象づけます。
STEP3 信念の確認
最後に、自らの信念や態度を確認し、強固なものとして定着させます。これにより、将来的な説得に対してより強い抵抗力を得ることができます。
(参考文献)
ドルー・エリック・ホイットマン「現代広告の心理技術101」ダイレクト出版(2011)https://amzn.to/3viz5YE
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