ドイツの戦車問題とは
ドイツの戦車問題(German tank problem)とは、限られた観測データから、全体の規模や最大値を推定する統計的手法を説明するために使われる有名な例題です。
この問題は、第二次世界大戦中に実際に直面した課題に由来します。
連合軍は、ドイツ軍がどれほどの数の戦車を生産しているのかを知る必要がありました。
しかし、敵国の工場を直接調べることはできません。そこで手がかりになったのが、ドイツ軍から奪った戦車の車体番号でした。
この問題は、特定の一人の研究者が「提唱」した理論ではありません。
戦時中に連合軍の統計学者たちが実務の中で用いた推定方法が、戦後「ドイツの戦車問題」という名前で知られるようになったものです。現在では、統計学やデータ分析の入門で必ず紹介される、非常に有名な事例となっています。
最大の車体番号が、戦車の総数じゃね?

ドイツの戦車問題の核心は、「最も大きい車体番号の推定」にあります。
たとえば、連合軍が奪った戦車の車体番号が「2、6、7、14」だったとします。
ここで直感的に考えると、「せいぜい20台か30台くらいかな?」と、なんとなく想像してしまいがちです。しかし、統計学ではもう少し合理的な推定ができます。
車体番号が「1から順番に振られている」と仮定すると、最大番号が14である以上、総生産数は14よりかなり大きい可能性が高いと考えられます。
そこで使われるのが、次の推定式です。

最大番号 +(最大番号 ÷ 奪った戦車の数)− 1 = 母集団の総数
今回の例では、最大番号:14 奪った戦車の数:4 なので、
14 +(14 ÷ 4)− 1 = 14 + 3.5 − 1 つまり16.5。

たった4台の情報しかなくても、「ドイツ軍はおおよそ16〜17台前後の戦車を生産している」という、かなり現実的な数字に近づけるわけです。
ポイントは、「見えていないデータにも、一定の規則性がある」と仮定している点です。
車体番号がランダムではなく連番で付けられているなら、少ないサンプルでも全体像をかなり絞り込めます。
現代での応用
ドイツの戦車問題は、一見すると戦争や統計の話に見えますが、現代において
・抜き打ち検査
・市場調査
・品質管理
など、現代の多くの分野にも応用されています。
また、日常の判断や意思決定にも役立つ視点を与えてくれます。
ドイツの戦車問題は、「数字に強くなる話」というより、不確実な世界でどう考えるかを教えてくれる思考法です。
見えていないものを想像し、限られた情報から一歩先を読む。
その姿勢こそが、この問題が今も語り継がれている理由なのです。



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