MUM効果とは
MUM効果(MUM effect)とは、人は悪い知らせ(ネガティブな情報)ほど、相手に伝えることをためらってしまう傾向があるという心理現象です。
また、情報の受け取り側にとっての、情報が不足することで悪い方向に考えてしまう現象もこれに含まれます。

MUMとは Keeping Mum(口をつぐむ) の略で、「黙ってしまう」行動を表しています。
この効果は、1970年代に社会心理学者のシドニー・ローゼンとアブラハム・テッサーによって研究・命名されました。
彼らは実験を通じて、人は良いニュースよりも悪いニュースのほうが、明らかに伝達を避けやすいことを示しました。
こうした行動は、性格の弱さではなく、人間にかなり普遍的に備わった心理反応だと考えられています。
なぜMUM効果は発生するか
なぜ、ネガティブな情報は相手に伝えにくいのでしょうか。
仕事で失敗したことを上司になかなか言えなのは、叱られてしまうからでしょうか。
患者への余命宣告を躊躇してしまうのは、相手がショックを受けるからでしょうか。
実は、ネガティブな情報を相手に伝えにくいのは、「悪い知らせなんか相手も聞きたくないだろう」という気持ちから生まれています。
また、悪い知らせだからこそ、これ以上の誤解や誤った解釈が生じてはいけないと感じ、伝えることが難しいと感じてしまうことも原因です。
なんでも話せる環境を作る

MUM効果が本当に厄介なのは、個人の勇気や誠実さの問題として扱われやすい点です。
しかし、悪い知らせが共有されない原因の多くは、「言いづらい空気」そのものにあります。
人は、怒られそう、責められそうだと感じた瞬間に口を閉ざします。実際に怒られるかどうかより、そうなりそうな雰囲気が問題です。
だから重要なのは、「正直に話せ」と求めることではありません。
話しても大丈夫だと体感できる環境を整えることです。
特に影響が大きいのは、悪い報告が出た直後の反応です。
感情的な対応や犯人探しが起きると、周囲は「次は黙ろう」と学習します。
逆に、「教えてくれて助かった」「早めでよかった」という反応が返ってくると、情報は集まりやすくなります。
また、完璧さを暗黙に求める文化もMUM効果を強めます。
失敗が許されない環境では、人は事実よりも保身を選び、問題は大きくなってから表面化します。
大切なのは、失敗よりも、隠されることのほうが危険だという共通認識です。
小さな違和感や未確定な情報を共有しても否定されない経験を重ねることで、「これは言っていい」という心理的な安心ラインが広がっていきます。
MUM効果は、人間関係を守ろうとする自然なブレーキです。
だからこそ、そのブレーキが強くなりすぎないよう、話しても関係が壊れない空気をつくることが何より重要なのです。
(参考文献)
山浦一保「武器としての組織心理学」ダイヤモンド社(2021)https://amzn.to/3TlNHAu



コメント