ニーバーの祈り

教訓
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ニーバーの祈りとは

ニーバーの祈り(Serenity Prayer)とは、人生における不安や葛藤に向き合うための、短くも本質を突いた祈りの言葉です。
もっともよく知られている形は、次のような一節です。

変えられないものを受け入れる冷静さを、
変えられるものを変える勇気を、
そして、その二つを見分ける知恵を与えてください。

この祈りは、20世紀アメリカの神学者・思想家であるラインホルド・ニーバーによって書かれたとされており、1930年代後半に、説教や祈祷文として用いられたのが始まりだと考えられています。

宗教的な文脈で生まれた言葉ではありますが、その内容は特定の信仰に依存しません。

そのため現在では、依存症回復プログラム(AAなど)をはじめ、心理学、自己啓発、ビジネスの分野でも広く引用されています。

ニーバーの祈りが支持され続けている理由は、人生の悩みを「整理する視点」を、非常に簡潔な形で示しているからです。

 

 

人生の悩みを三つに分ける思考の仕組み

ニーバーの祈りの核心は、人生の出来事を次の三つに分けて考える点にあります。

・変えられないもの
・変えられるもの
・その違いを見分けること

① 変えられないものを受け入れる冷静さ

私たちは、つい「どうにもならないこと」にエネルギーを使ってしまいます。
過去の出来事、他人の性格、社会の構造、すでに起きてしまった失敗などは、どれだけ悩んでも変えられません。
ニーバーの祈りは、「変えられないものを我慢しろ」と言っているわけではありません。
無駄な抵抗をやめ、心をすり減らさない選択をしようと促しているのです。

② 変えられるものを変える勇気

一方で、人は「本当は変えられること」からも目をそらしがちです。
行動を起こすのは怖く、失敗の責任も伴うからです。
自分の態度、習慣、選択、環境との距離の取り方。
これらは簡単ではありませんが、自分の意思で変えられる領域です。
ニーバーの祈りは、受け身になることでも、無理に諦めることでもなく、「変えられる部分には責任を持とう」という、現実的な姿勢を示しています。

③ 二つを見分ける知恵

この祈りで最も重要なのが、この最後の一行です。
多くの悩みは、「変えられないものを変えようとして苦しむ」、「変えられるものを”仕方ない”と放置する」という取り違えから生まれます。
ニーバーの祈りは、「頑張れ」とも「諦めろ」とも言いません。まず仕分けをしなさいと教えてくれるのです。

 

 

無駄に消耗しないための知恵

ニーバーの祈りは、暗唱するための言葉というより、考え方のフレームワークとして使うと力を発揮します。

① 悩みを書き出して仕分けする

何かに悩んだとき、紙に「今、困っていること」を書き出し、それぞれに「変えられる/変えられない」を付けてみてください。

すると、悩みの多くが「実は変えられない領域」に集中していることに気づくはずです。

 

② 行動は「変えられるもの」だけに使う

変えられないものについては、「どう折り合いをつけるか」「距離をどう取るか」に発想を切り替えます。

その分、変えられるもの――行動、準備、言い方、選択肢――にエネルギーを集中させます。
これだけで、無力感は大きく減ります。

 

③ 他人の悩みにも応用する

誰かの相談を聞くときも、いきなり励ましたり、正論を言ったりする前に、「それは変えられること?変えられないこと?」と一緒に整理するだけで、会話はずっと楽になります。

 

ニーバーの祈りは、「強くなるための言葉」ではありません。
無駄に消耗しないための知恵です。

人生が思い通りにいかないと感じたとき、この祈りの視点は、「何を手放し、何に力を使うべきか」を静かに教えてくれるはずです。

(参考文献)
エリザベス・シフトン「平静の祈り」 穐田信子訳, 新教出版社(2020)https://amzn.to/3RtQgh4

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