オデュッセウスの鎖とは
オデュッセウスの鎖(Chain of Odysseus)とは、将来の自分が誘惑に負けないよう、あらかじめ行動の自由を制限しておく自己コントロールの方法です。
「意思の弱さを気合で克服する」のではなく、「弱くなる前提で仕組みを作る」という考え方が特徴です。
名前の由来は、ギリシャ神話『オデュッセイア』に登場する英雄オデュッセウスです。
彼は航海中、船乗りを惑わせるセイレーンの歌声を聞きたいと願いましたが、理性を失う危険を理解していました。
そこで、自分を船のマストに縛り、部下には耳栓をさせて航海させます。
この「自分を縛る」という行為が、オデュッセウスの鎖の原型です。
未来の自分を守るための具体的なやり方

オデュッセウスの鎖のポイントは、「誘惑が現れてから対処しない」ことです。
意思が弱くなるのは分かっているので、誘惑に出会う前に選択肢を消してしまうのが基本戦略になります。
例えば、
- ダイエット中にお菓子を家に置かない
- 仕事中はスマホを別の部屋に置く
- 強制的に積立貯金が引き落とされる仕組みを作る
- SNSの使用時間をアプリで制限する
といった方法がそれに当たります。
重要なのは、「自分を信用しない」ことではなく、「人間は感情で動く存在だと認める」ことです。
冷静なときの自分が、将来の自分のためにルールを作っておく。それがオデュッセウスの鎖です。
オデュッセウスの鎖がもたらすメリット
この手法の最大のメリットは、意思力を節約できることです。
毎回「やるべきか、やらないべきか」を考えるのは大きなエネルギーを使います。選択そのものをなくせば、迷いも消えます。
また、失敗したときに自分を責めにくくなる点も重要です。
「我慢できなかった」のではなく、「そもそもできない仕組みにしていなかった」と考えられるからです。
オデュッセウスの鎖は、強い意志を持つ人のための方法ではありません。
むしろ、弱さを自覚している人ほど効果を発揮する賢い戦略です。
自分を縛ることは不自由に見えますが、長い目で見れば、望む未来への近道になることもあるのです。
(参考文献)
RHフランク「オデュッセウスの鎖-適応プログラムとしての感情」大坪庸介訳, サイエンス社(1995)https://amzn.to/48ldrBb


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