レミニセンス・バンプ

記憶
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レミニセンス・バンプとは

レミニセンス・バンプ(Reminiscence bump)とは、過去の出来事を振り返ったとき、10代後半〜30歳前後の記憶が、他の年代よりも特に多く・鮮明に思い出されやすい現象を指します。

たとえば、「人生で印象に残っている出来事は?」「思い出深い音楽は?」と聞かれると、多くの人が高校時代、大学時代、社会人になりたての頃の体験を挙げます。

上記の図は、50歳の人の記憶に残っている事柄の数をグラフ化したものです。

50歳の人にとって、45歳の頃の記憶、40歳の頃の記憶、だんだんと昔の記憶が失われていることが分かります。

しかし、なぜか10代後半~20代前半の記憶についてはやたら記憶が残っており、グラフ上で「こぶ」(バンプ)のようにみえるので、レミニセンス・バンプと呼ばれています。

この現象は、特定の一人が明確に提唱した理論ではありません。
1970年代以降、認知心理学や記憶研究の分野で繰り返し観察・検証され、現在では広く認められている記憶の特徴の一つです。特に、デヴィッド・ルービンらの研究によって、体系的に整理されてきました。

 

 

なぜ若い頃の記憶だけが特別に残るのか

レミニセンス・バンプが起こる理由については、いくつかの有力な説明があります。

① 「初めて」が集中する時期だから

10代後半〜20代は、初めての恋愛、進学や就職、一人暮らし、価値観の大きな変化など、人生の中でも「初めての経験」が非常に多い時期です。
脳は、新規性の高い出来事ほど強く記憶に残す性質があります。そのため、この時期の体験は、自然と記憶に刻まれやすくなります。

② 自己形成と深く結びついている

この年代は、「自分はどんな人間なのか」「どう生きていくのか」といった、自己イメージが形作られる時期でもあります。
自己と強く結びついた出来事は、単なる事実ではなく、「自分の物語の一部」として記憶されます。そのため、時間が経っても思い出しやすいのです。

③ 記憶の保存効率が高い時期

生物学的にも、若い時期は脳の認知機能が安定しており、情報の符号化(記憶への書き込み)や整理が効率的に行われます。
これに対し、年齢を重ねると、「毎日が似たような日常」になりやすく、新しい記憶同士が区別されにくくなります。
その結果、若い頃の記憶だけが相対的に目立つことになります。

 

 

記憶の仕組みを知るということ。

レミニセンス・バンプは、単なる記憶の不思議ではありません。
日常のさまざまな場面で、実用的に活かすことができます。

なつかしさの正体を理解する

昔の音楽や映画に強く心を動かされるのは、「今のものが劣っているから」ではありません。それは、その作品が自分の人格形成期と結びついているからです。
この仕組みを知っていると、懐古的な感情に振り回されすぎずに済みます。

他世代を理解するヒントにする

おじさん世代が昔の話ばかりするのも、若い世代が「最近のもの」を重視するのも、どちらも自然なことです。
それぞれが、自分のレミニセンス・バンプの中で生きていると考えると、世代間ギャップは少し穏やかに見えてきます。

「今」を未来のレミニセンス・バンプにする

レミニセンス・バンプは、過去の話だけではありません。今この瞬間も、将来の思い出の種になり得ます。
新しい挑戦、初めての経験、価値観が揺さぶられる出来事は、年齢に関係なく、記憶に残りやすい体験です。「どうせ忘れるから」と流してしまうより、意識的に記録したり、言葉にしたりすることで、将来振り返ったときの「自分の物語」を豊かにできます。

レミニセンス・バンプが教えてくれるのは、人の記憶は平等ではなく、人生のある時期に強く偏るという事実です。
だからこそ、過去に強く引き寄せられるのも自然ですし、今の毎日が地味に感じるのも不思議ではありません。

大切なのは、「若い頃が一番だった」と決めつけることではなく、これからの人生にも、次の“山”をつくれると知ることです。
新しい経験は、いつでも、未来のレミニセンス・バンプになり得るのですから。

(参考文献)
アン・M・クリアリー、ベネット・L・シュワルツ「記憶現象の心理学」北大路書房(2022)https://amzn.to/3TT0Dho

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