ストックホルム症候群

犯罪心理
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ストックホルム症候群とは

ストックホルム症候群(Stockholm syndrome)とは、誘拐事件や監禁事件などの被害者が、自分を支配・拘束している犯人に対して、好意や共感、擁護の感情を抱いてしまう心理現象を指します。

この言葉は、1973年にスウェーデン・ストックホルムで起きた銀行強盗事件をきっかけに広まりました。
人質となった被害者たちが、救出後に犯人をかばうような発言をしたことに注目した精神科医のニルス・ベイルートが、この現象を説明する際に用いたのが始まりとされています。

監禁事件やDV、カルト、ブラック企業、人間関係の支配構造など、さまざまな場面を理解するための概念として、心理学・社会学の文脈で広く使われています。

 

 

なぜ支配する相手に好意を抱いてしまうのか

ストックホルム症候群が起きる理由については、いくつかの仮説があります。ここでは代表的な4つの説を紹介します。

① 犯人からの許可が好意を生み出す説

極限状態では、「殺されない」「殴られない」「水をもらえる」「トイレに行くことを許される」といった最低限の配慮が、非常に大きな意味を持ちます。

すると被害者は、「この人は優しいところもある」「助けてくれた」と解釈してしまい、恐怖と同時に好意が芽生えることがあります。これは、支配者が持つ“生殺与奪の権限”が、感謝にすり替わる現象とも言えます。

② 人質のサバイバル戦略説

生き延びるための無意識の戦略が犯人に対する行為を生み出しているという説です。

犯人に敵意を向けるより、理解者・協力者のように振る舞った方が、危害を加えられにくく、その結果として生存確率が上がります。そのため、心が自然と「相手に寄り添う方向」へ調整されるのです。

③ 人質のコントロール欲説

人質は、行動が完全に制限されている状況です。この状況を少しでも改善し、自分が何かしらコントロールできるものを得るために、犯人の作業を手伝う等、彼らとの繋がりを持とうとします。そしてその結果、犯人との関係性を強めてしまうという説です。

実際には主導権は犯人側にあるのですが、心理的には「自分が主体的に関係性を築いている」と錯覚してしまうというわけです。

④ 認知的不協和説

「怖い相手に支配されている」という現実と、「その相手に従っている自分」という事実の間には、大きな矛盾があります。

この不快な矛盾(認知的不協和)を減らすために、「自分が間違っていたかもしれない」
「きっと犯人にも事情があるんだ」と、拘束されている自分の状況に正当性を見出だそうとしてしまいます。

 

 

ストックホルム症候群を日常にどう活かすか

ストックホルム症候群は、特殊な犯罪被害者だけの話ではありません。日常生活の中にも、構造的に似た関係は存在します。

たとえば、

理不尽に怒鳴る上司を「本当は面倒見がいい」と擁護する

強く束縛する恋人を「愛情が深い人」と解釈する

辞めたい職場を「ここで鍛えられた」と正当化する


これらは、程度の差こそあれ、同じ心理構造が働いている可能性があります。

また、「相手の一部の優しさ」と「関係全体の健全さ」は別物だと切り分けて考えることも重要です。

・恐怖や不安が前提になっている
・選択肢が実質的に奪われている
・離れることを考えるだけで強い罪悪感が出る

こうした状態に心当たりがあれば、一度距離を取って状況を見直す価値があります。

ストックホルム症候群は、「人は弱いから騙される」という話ではありません。人が生き延びるために備えている、非常に高度な心の防衛反応なのです。

その仕組みを知ることは、自分や他人を責めるためではなく、不健全な関係から抜け出すヒントを得るためにこそ、意味があります。

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