ナラティブ・アプローチとは
ナラティブ・アプローチ(Narrative approach)とは、相談相手や患者などを理解する際に、相手の語る物語を通して解決法を探る手法のこと。
こちらから解決策をアドバイスするよりも、相手の言葉や考えには無意識に「自分自身の物語」が刷り込まれています。
これらの物語は、経験、感情、アイデンティティを形作る重要な要素です。
ナラティブ・アプローチとは、このような個々の物語を通じて人間の心理や行動を理解し、分析・支援する手法です。
ナラティブ・アプローチの進め方

ナラティブ・アプローチの基本は、相手の話を“直す”のではなく、“聴く”ことから始まります。
まず大切なのは、評価やアドバイスを急がないこと。
「それは間違っている」「こうすべきだ」と言う前に、相手がどんな言葉で自分の経験を語っているかに耳を傾けます。
次に行うのが、物語の外在化です。 たとえば、

自分はダメな人間だ・・・
と言う人がいたら、

あなたがダメなのではなく、“自分を責める考え”が強くなっていますね。
と、問題をその人自身から切り離して捉えます。
さらに、その人の人生の中にある例外的なエピソードを探します。
「うまくいかなかった話」だけでなく、「少しうまくいった瞬間」、「乗り越えた経験」に光を当てることで、新しい物語の材料が見えてきます。
こうして、「失敗ばかりの人生」という物語から、「困難があっても立ち直ってきた人生」という物語へ、少しずつ語り直していくのです。
ナラティブ・アプローチのメリット
ナラティブ・アプローチの最大のメリットは、人をラベルで縛らないことです。
「問題児」「メンタルが弱い人」といった評価は、一度貼られると簡単に剥がれません。
しかしナラティブ・アプローチでは、人ではなく物語のほうを見直すため、「あなたはこういう人だ」という決めつけから自由になれます。
また、この方法は、相手に「変えられている」という感覚を与えにくいのも特徴です。
アドバイスで方向を押しつけるのではなく、本人が自分の言葉で意味を組み替えていくため、納得感のある変化が生まれます。
さらに、対人支援だけでなく、マネジメントや教育の場でも効果を発揮します。
部下や生徒を「できない人」として見るのではなく、「まだうまくいく物語を作れていない人」として見ることで、関わり方そのものが変わります。
ナラティブ・アプローチは、人を変える技法というより、人の語りを信じる姿勢です。
物語が変われば、同じ現実でも見え方が変わる。
その変化を支えるのが、このアプローチなのです。



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