なぜ、電通に嫌悪感を抱いてしまうのか

みんな電通が嫌いなの?

なにかと話題な大手広告代理店電通。

国内最大の広告代理店として広告を手掛けるだけでなく、ビジネスの課題解決や商品開発、マーケティングなどの領域で事業を行っており、新卒の就職先として人気を集める大企業です。

そんな電通ですが、なんだかやたらと世間の人から嫌われているイメージも付きまとっているようです。

プロボクサーの村田諒太さんが試合後に…

村田諒太
村田諒太

みんなあんまり好きじゃないかもしれませんが、

電通の皆さんありがとうございました(中略)

…と、コメントしたこともあり、この「電通嫌い」は、なにもネット掲示板やSNS界隈だけの風潮というわけでもなさそうです。

SNSを中心に電通のイメージを調べてみると、様々な意見が見つかります。

エリート意識や選民意識を
隠すことなくひけらかす社員が多い。

テレビCMという限られた商材を
「売ってやる」という殿様商売。

実際は別会社に丸投げなのに
中間マージンだけがっつり搾取する。

(https://jp.quora.com/の記事より)

上記の意見のように実際にビジネス上での接点があった方ならば、電通に対してなんらかの印象を持っていることは考えられますが、そうでない人まで電通を嫌う理由はなんなのでしょうか。

 

 

心の自由を奪われる嫌悪感

国内最大手の総合広告代理店である電通は、広告だけでなく様々なプロジェクトに携わっています。

テレビドラマ・映画・アニメなどの映像作品から、オリンピック、サッカーワールドカップ、WBCなどのスポーツイベント、数々のトレンドやヒット商品まで、電通は徹底的なマーケティングを行いプロジェクトを成功へと導いてきました。

あまり知られていない素晴らしい商品にスポットを当て、ヒット商品の座にまで押し上げたり、新しいトレンドを作りあげたり、そして世界的スターや伝説のアスリートの興行を日本で開催したり。

電通のおかげで、私たちは様々な商品、作品、イベントに触れることができています。しかし、この電通の頑張りが私たちの心の自由を奪っているのかもしれません。

 

 

心理学の言葉に心理的リアクタンス(Psychological reactance)というものがあります。

心理的リアクタンスとは、心や行動の自由が脅かされた時、自由を取り戻そうとする心の反発のこと。そして、この反発こそが電通への嫌悪感を招いていると考えられます。

どの商品を選ぶのか、どの映画を見に行くのか、行ってみたいスポーツイベントはなにか。人間は、これらのことを自分の意志で自由に決めることができます。

しかし、この自分の意志だと思って選んだものが、電通が仕掛けたトレンドだったら?

そんな時、人間の心は自由意志を取り戻そうとして電通に反発します。自分で選んだはずのものなのに電通の息がかかっているものであるという理由だけで、別のものを選び直してしまうこともあるかもしれません。

これは、電通という他者の意志に、自分が従う結果になってしまったことに人間が嫌悪感を覚えるからです。人間の心は常に自由でいたいというわけです。

 

心理的リアクタンスのよくある例として、子供に注意をしすぎてしまう親の事例があります。

学校から帰ってきた子供が珍しく「たまには宿題を済ませてから遊びにいこう」と自らの自由意志で計画を立てました。しかし、親は「遊びに行く前に宿題やってよね」と注意をしてしまいます。

この時、子供は自らの自由意志で決めたはずの「宿題を済ませてから遊びに行く」という当初の行動を取り止めてしまいます。これも親の意志に従ったことになるのを嫌ったからです。

 

 

電通に従う結果になることを嫌がる

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「100日後に死ぬワニ」の騒動が記憶に新しいところです。

「100日後に死ぬワニ」は、イラストレーターのきくちゆうきさんがTwitter(現X)にて発表した4コマ漫画です。主人公のワニが亡くなるまでの100日間を描いたもので、100日目を迎えるまで毎日投稿された作品でした。

投稿が続くにつれて、クチコミやSNSで大人気となりましたが、最終回の直後に電通が関与しているとの噂が広がり「ワニはステマ」「電通案件」と大炎上、一気にブームは終息しました。

実際には電通の関与はほとんどなく(映画主題歌のミュージシャン関係で少しだけ絡んだ)、商業展開のオファーがあるまでは、きくちゆうきさんが1人で黙々と描き続けていたとのことです。

この騒動は「面白い漫画じゃん」「応援したくなる作品」と、人々が自らの意志で「100ワニ」を応援していたにも関わらず、電通が絡んでいるとの噂によって心理的リアクタンスが発動し、電通の仕掛けに乗っかることへの反発心が人々の中に芽生えたものと言えます。

 

 

瞬く間に拡散される悪い評判

元電通社員で作家・ブロガーのはあちゅうさんが、電通で学んだこととして以下の内容をSNSに投稿しています。

CMは偏差値40の人にも分かるように作れ。
世の中には恐るべき数のバカがいる。
でも、それが普通の日本人だ。

この会社にいる時点で自分が普通じゃないことを自覚しろ。

国民のことをバカっていうところがちょっと気になりますが、要するに普通の人たちの目線に合わせて仕事しろよっていう意味の教訓です。

普通の人たち=お客様の目線や立場に立って商売するなんてことは、電通に限らず多くの会社が取り組んでいるものでしょう。しかし「殿様商売」という印象もあったように、この教えには普通の人たちの目線や立場に寄り添ったり、共感する姿勢は微塵も感じられません。

インターネットやSNSが普及したことにより、評判や噂が瞬く間に拡散されるようになりました。勿論この傲慢な教訓も、あっと言う間にネット上で拡散され炎上しました。

優秀な社員を抱える電通なので、そんなレピュテーションリスクが存在することはもちろん認識しているはずです。

しかし、それでもやり方を改めないのは、バカな国民が抱く評判なんかが自身の経営に与える影響は少ない。そう考えてるからなのかもしれません。

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