プロテウス効果

メンタルヘルス

プロテウス効果とは

プロテウス効果(Proteus effect)とは、オンライン環境での自分のアバターの外見が、行動や態度に影響を与える現象を指します。

例えば、あなたがゲーム内でより大きくて強力なキャラクターを選んだ場合、ゲーム内で他のユーザーを力強く引っ張るような自信に満ちた行動を取るようになります。

また、ゲーム内で回復魔法を使うキャラクターを選んだ場合、より献身的な行動が増加すると言われています。

そして、何より興味深いのは、オンライン世界だけでなく、現実世界でも行動の変化がみられるという点です。

このプロテウス効果は2007年に、スタンフォード大学のニック・イーとジェレミー・ベイルソンが提唱しました。その名はギリシャ神話の変身の達人、プロテウスにちなんで名付けられています。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

社員証の写真がすごいキメ顔な人っているよね。

イトケン
イトケン

イケてる自分の姿を見るって大事なんだ。

 

 

なぜ現実世界の行動にも影響を与えるのか

プロテウス効果は、私たちの自己認識や行動に深く影響を与える可能性があります。

オンラインでのアイデンティティが、現実世界での自信や社会的スキルを向上させることもあれば、逆に否定的な影響を与えることもあります。

ではなぜ、ゲーム内でのアイデンティティが、現実世界に影響を与えるのでしょうか。

このメカニズムを理解するためには、心理学、行動科学、および社会学の概念を組み合わせて考える必要があります。

アイデンティティと自己知覚の変化
ゲーム内でプレイヤーが選択したキャラクターは、しばしば理想化された自己像を反映します。この理想化された自己が強力であったり、社会的に魅力的であったりすると、プレイヤーは自己効力感(自分の能力に対する信頼)を高めることがあります。この自己効力感の増加は、現実世界での行動や決断にも影響を与える可能性があります。

行動の転移
ゲーム内での体験や行動は、現実世界の行動パターンに影響を与えることがあります。例えば、ゲーム内でリーダーシップを発揮した経験は、現実世界での自信やリーダーシップスキルに影響を与えることがあります。このような「行動の転移」は、新しいスキルや行動様式をゲームの外でも試すきっかけになり得ます。

感情的な経験と学習
ゲーム内での強烈な感情的体験(勝利、敗北、チームワークなど)は、プレイヤーの心理的状態に影響を及ぼす可能性があります。これらの経験は、現実世界での類似した状況に直面した際の感情的反応や対応方法に影響を与えることがあります。

社会的相互作用と規範の学習
ゲーム内での社会的相互作用は、社会的スキルや規範を学ぶ機会を提供します。オンラインでのコミュニケーションや協力は、現実世界での人間関係やチームワークに関するスキルを磨くことに役立ちます。

習慣化と行動変容
ゲーム内で特定の行動を繰り返すことにより、これらの行動が習慣化することがあります。習慣化された行動は、意識的な思考なしに、現実世界の日常生活に浸透する可能性があります。

没入感と現実感の境界のぼやけ
高度に没入感のあるゲーム体験は、ゲーム内外の現実感の境界をぼやけさせることがあります。このぼやけた境界が、ゲーム内の行動や規範が現実世界にも適用される感覚を生み出すことがあります。

もちろんこのプロテウス効果は、ゲームデザインやプレイヤーの心理状態によって異なりますが、ゲーム体験が現実世界の行動に与える影響は無視できないものとなっています。

現在では教育や心理療法、さらには社会学の分野で応用されています。

 

 

プロテウス効果の実例

教育
学習用ゲームやVR環境で、生徒たちは自信に満ちたアバターを選ぶことで、自己効力感を高め、積極的な学習姿勢を取りやすくなることがあります。

社会心理学
人々はオンラインでの自分のアバターが魅力的だと感じると、現実世界でもより自信を持ち、社交的になる傾向があります。

ビジネス
仮想環境での会議やプレゼンテーションでは、自分のアバターの外見によって、その人の説得力やリーダーシップが変化することがあります。

 

プロテウス効果は、私たちが仮想世界と現実世界の境界線をどのように理解し、また操るかに大きな影響を与えています。

この理解を深めることで、私たちはオンラインのアイデンティティをより良い方向に活用する方法を見出すことができるでしょう。

(参考文献)
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