サスペンス・パラドクス

他者/自己

サスペンス・パラドクスとは

サスペンス・パラドクス(Paradox of suspense)とは、ドラマや映画などのサスペンス作品において、結末を知っていたとしても作品をまぁまぁ楽しめてしまう現象のこと。

もちろんネタバレが無い状態のほうが、作品を楽しめるのは言うまでもありません。

しかし、結末、犯人、トリックなど、そんなサスペンス作品においては作品の最重要要素であるはずの情報を仮に知っていたとしても、なぜだかそこそこ作品を楽しめてしまうものです。

例えば、過去に観たことがあるサスペンス・ドラマがテレビで再放送されていた。結末をすべて知っているにも関わらず、そのドラマを思わず見入ってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これこそがストーリーテリングの世界ではよく知られたサスペンス・パラドクスと呼ばれる現象です。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

結末知ってるのに、サスペンス楽しめるって、言われてみるとヘンだよね・・

イトケン
イトケン

ついつい見ちゃうんだよ・・夕方のドラマ再放送・・

 

 

サスペンス・パラドクスのメカニズム

今まで何人もの作家たちがこのサスペンス・パラドクスの謎を解き明かそうと、数々の仮説が立てられています。ここではそのいくつかをご紹介します。

感情移入してしまう説
物語を読む際や映画を見る際、私たちはしばしばキャラクターに感情移入します。この感情移入は、物語の結末を既に知っている場合でも変わりません。キャラクターが直面する困難や、彼らの幸せを願う気持ちは、私たちを物語に引き込み、キャラクターの運命に心から関心を持たせます。

謎に引き寄せられてしまう説
サスペンス作品にありがちな「謎」。これは手持ちの情報が一部欠けていたり、一部が分からなかったり、情報が不完全な状態を指します。そんな時、人間は好奇心からその謎に食いついてしまいます。いわゆる、物語の謎にぐいぐい引きこまれてしまう、物語に登場する謎がどうしても気になってしまう。足りないピースが気になってしょうがないわけです。

演出スゴすぎる説
映画であれば、緊張を高める音楽、緊迫感を増すカメラワーク、タイミングの良い編集などが、視聴者の緊張感を引き立てます。これらの演出技術は、結末を知っている場合でも、その瞬間の緊張感や不安を高める効果があります。つまり、物語の「どうなるか」ではなく、「どう展開するか」に私たちの注意が引き寄せられるのです。

 

 

サスペンス・パラドクスの魅力

サスペンスのパラドックスは、物語が私たちに与える影響の深さを示しています。

感情的な没入や演出の巧みさが組み合わさることで、既知の物語でも新鮮な体験を提供し、私たちを引き込む力を持っています。

これは、良い物語が一度きりの体験ではなく、何度でも楽しめる芸術作品であることを示しています。

次にお気に入りの映画を再視聴するとき、または愛読書を手に取るとき、サスペンスのパラドックスを念頭に置いてみてください。

そして、知っている物語がどのようにして再び心を掴むのか、その瞬間瞬間に注目してみてください。おそらく、それは以前に感じたことのある興奮や緊張感を、新たな視点から体験することになるでしょう。

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