アビリーンのパラドックス

集団心理

アビリーンのパラドックスとは

アビリーンのパラドックス(Abilene paradox)とは、集団が何かをしようとするとき、その集団に所属するメンバー各々が望んでいないことを決定してしまう現象のこと。

ジョージワシントン大学の名誉教授で経営学者のジェリー・B・ハーヴェイが、著書「アビリーンのパラドックスと経営に関する省察」で提示しました。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

不思議だね・・周りの空気を読んじゃうのかな?

イトケン
イトケン

そうだねー。みんなきっとこう思ってると無意識に感じちゃうんだろうな・・

 

 

みんなきっとこう思ってる。

自分はそう思わないけど、きっとみんなはそう思ってるに違いない。

空気を読んでみんなに話を合わせたつもりが、実はみんな同じように「自分は嫌だけど、きっとみんなは…」を考えていた。

つまりアビリーンのパラドックスは、みんな「誰も望まないこと」を決定してしまう集団思考の落とし穴とも言えます。

提唱者のジェリー・B・ハーヴェイは自身の著書でこんな物語を紹介しています。

ここで出てくるアビリーンとは、テキサス州に実在する小さな田舎町のことです。

ある八月の暑い日、ある町で、夫妻とその親夫婦が団らんしていた。
そのうち舅が53マイル離れたアビリーンに夜食を食べに行こうと提案した。
姑も夫妻もその提案に反対しなかったが、
道中は暑くてホコリっぽく到底快適なものではなかった。
4時間かかって疲れて帰宅した後で彼らはこう言い合った。

姑「家にいたかったけど、あなたたちが行きたそうなのでついて行った」

夫「別に乗り気じゃなかったが、皆が行きたそうだから連れて行った」

妻「皆が行くと言うから一緒に行っただけ。暑い中で出かけるより家にいた」

舅「わしは別に行かんでも良かったが、皆が退屈そうだから行こうと思った」

The Abilene Paradox and other Meditations on Management, Jerry B. Harvey(1974)

 

ホントは誰もアビリーンなんて田舎町に行きたくなかった。

でも、お互いの意思疎通が不完全で、しかも「相手はきっとこう考えているに違いない」という想像も手伝って、アビリーンへ小旅行することになり、結果として全員が消耗してしまうというエピソードです。

誰も望んでいないことが集団の決定事項となってしまうなんて、なんだか不思議なエピソードですよね。

 

 

アビリーンのパラドクスのメカニズム

このパラドクスの背後にある主なメカニズムは、社会的影響や群集心理の影響です。

個人は、自分の意見や選択肢が他のメンバーと合致することを望む場合、その意見を控えることがあります。一般的な傾向として人々は集団との一致を追求し、個人的な違いを最小限に抑える傾向があります。

このため、本来は異なる意見や選択肢が共通の合意に結びつくことがあります。

 

 

日常に潜む集団思考の落し穴

アビリーンのパラドクスは、日常生活でも見られる現象です。

例えば、友人同士でのレストランの選択や映画の選択、あるいは職場でのプロジェクトの方針決定などが挙げられます。

個々のメンバーが本来は別の選択肢を好むかもしれないにも関わらず、誰もが無難な選択肢を支持することで、そのまま意思決定が進行することがあります。

 

 

どんな影響があるの?その対策は?

アビリーンのパラドクスが持つ影響の一つは、創造性や多様性の欠如です。

個人の異なる意見やアイディアが抑えられるため、新しいアイディアや革新的なアプローチが生まれにくくなる可能性があります。

また、このパラドクスが持つ影響は、集団の健全な意思決定を妨げる可能性もあります。

対策としては、オープンなコミュニケーション環境の構築や、リーダーシップが個々の意見を尊重し、多様性を奨励する姿勢を示すことが挙げられます。

また、意思決定プロセスを透明化し、個人の異なる意見を尊重する文化を醸成することも重要です。

(参考文献)
The Abilene Paradox and other Meditations on Management, Jerry B. Harvey(1974)

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