ミルグラム実験

他者/自己

ミルグラム実験とは

ミルグラム実験(Milgram experiment)とは、命令に従う服従の心理を調べた実験のこと。

アメリカの心理学者スタンレー・ミルグラム博士の報告によると、大義名分や言いわけがあれば、人間誰もが残酷になり得ると結論付けられています。

ホロコーストの最高責任者だったアドルフ・アイヒマンが、戦争裁判で自身の行為を「命令に従っただけ」であると主張し続けたことから、ミルグラム実験は、彼の心理を解き明かす研究としてアイヒマン・テスト(Eichmann test)とも呼ばれています。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

仕事を頑張りたくて、彼女に別れを切り出しました。

イトケン
イトケン

残酷~!…ってゆーか、ウソつけ!

 

 

ミルグラム実験の実験内容とは

ミルグラム実験の内容は以下の通りです。

電気ショックのボタンを押す担当者がこの実験のターゲット。
クイズに間違うと、罰として電気ショックを与えるゲームで、仕掛け人である回答者はわざと間違った答えを連発してしまう。
ちなみに実際に電流は流れておらず、仕掛け人の回答者は電流が流れて苦しむ演技をしています。

なお、ターゲットの電流ボタン担当者には、こっそり「実はこの電流を流すのはかなりヤバい」と事前に伝えてあります。

回答を間違うたびにどんどん苦しみ、疲弊していく回答者。(もちろん演技)
ターゲットの電流ボタン担当者は、ゲームの主催者に「もうやめよう!」「ヤバいって!」と訴え始め
ますが…

ゲームの主催者側は、「責任は我々が負います」「実験を続けてください」と言うばかり。
結果として、なんと被験者の62%は最後まで電流を流し続けました。

このようにミルグラム実験は、権威ある人物からの命令には人間は服従してしまうことを示した実験です。特に、「責任を取らなくていい状況」であれば、人間はどんなヒドいことでもやってしまう。これ変じゃないか?とか、おかしいだろ!とか、そんなことすら考えなくなってしまいます。

冒頭でご紹介したホロコーストの最高責任者アイヒマンは、終戦後にアルゼンチンで名を変え、ひっそりと逃亡生活を送っていましたが、妻の結婚記念日に花を購入していたことで、身分がバレてしまい拘束されました。

大量のユダヤ人を収容所送りにした彼の冷酷な一面と、妻を愛する一面。どちらが彼の本当の姿なのか。裁判の記録では、彼はとても穏やかで平凡な公務員であると記録されています。

つまり、そんな普通の平凡な市民でも、一定の条件下では冷酷で非人道的な行為を行うことを証明することになったのがこのミルグラム実験です。

 

 

人間は権威に弱い

ミルグラム実験では、単にボタンを押すという作業範囲を限定したことで、作業範囲外の責任が希薄化してしまうことも示していますが、何より「人間は権威に弱い」ということをはっきり示したものと言われています。

ミルグラム博士はこの結果を、人々が社会的な状況や権威者の指示に従うことが、彼らの道徳的な判断を超える力を持つことに起因すると考えました。

実際、多くの被験者は権威者の命令に逆らうことが難しいと感じていたとされています。

 

 

権威を利用する

単に商品を紹介するのではなく、あの大物女優も利用している商品です!と紹介したほうが、消費者の購買意欲が増してしまうのも、権威に弱い人間の習性を上手く突いた宣伝方法です。

また、「ホリエモンも言っていたんだけど、自分はこう思うんだよね…」という話術のことを権威論証(Ad verecundiam)と言いますが、これも権威ある人物と自分の意見が同じであることを利用して、自分の意見の正当性をアピールしているものです。(権威ある人物の意見が正しいとは限りませんが)

ミルグラム実験は、人間の心理における複雑な側面を明らかにするものであり、我々が日常生活で権威にどのように従ってしまうかについて深い洞察を提供しています。

この実験を通じて、我々は自らの行動や社会的な影響に対する注意を高め、倫理的な判断力を鍛えることの重要性を理解することができます。

(参考文献)
スタンレー・ミルグラム「服従の心理」河出書房新社(2012)https://amzn.to/4aw7YJK

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