双曲割引

意思決定

双曲割引とは

双曲割引(Hyperbolic discounting)とは、人間が感じる価値と時間との関係を示した概念のこと。私たちの日常の意思決定にも影響を与える興味深い現象です。

例えば、1万円札には今日も1万円の価値があるし、明日も1万円の価値があります。基本的には20年後だって1万円の価値のまんまのはずです。

これは標準的な経済学の考え方であり、当たり前のことなんですが、ここに人間の感情をねじ込んで考えてみると少し話が変わってきます。

双曲割引は、将来の報酬やコストに対する割引率が時間の経過とともに変動するという考え方です。提唱者であるテンプル大学のジョージ・エインズリー教授によると、私たちが将来の出来事や報酬に対して、その期限が近づくにつれて割引率を高く見積もる傾向があると示しているとしています。

引き続き1万円札の例で以下の2つを考えてみましょう。

今日1万円札を貰う
   vs
10日後に1万円札を貰う

この場合、多くの人が今日1万円を貰うほうを選びます。人間の感情として、その価値が10日後という近い将来には大きく低下して感じられることを示しています。

365日後に1万円札を貰う
   vs
375日後に1万円札を貰う

選択肢が2つなので、どちらかを選ばなくてはいけませんが、正直ほとんどの人が「そんなの、どーでもいい」と感じます。1つ目の例と同じ「10日間の違い」のはずですが不思議です。どうやら私たち人間は遠い将来のことならば10日間に価値の変動が無いと感じるようです。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

そういえば、1年前に貸した1万円返してよ!

イトケン
イトケン

ふっ・・そんなの、どーでもいいじゃねーか・・(遠い目)

 

 

同じ10日間でも価値が違うと感じてしまう

いつ1万円札を貰えるか。

今日か10日後か。それとも365日後か375日後か。

同じ10日間の違いなのに、私たち人間の感情は、近い将来の10日間では価値が大幅に下がると感じてしまい「10日後よりも今日1万円欲しい!」と感じます。

そして同じ10日間のはずなのに、遠い将来の10日間では、その価値に変動があまりないと感じてしまい「365日後?375日後?そんなん、どっちでもいいよ・・」と感じてしまいます。

よって、「近い将来ならば待てない。遠い将来ならば待てる。」という今までの経済学理論ではどーにも説明できない概念が生まれてしまいます。グラフで表すと以下の通りです。

最初はグーンと体感価値が低下するのに、それ以降はあんまり下がらない。

最初は価値が低下すると感じるから10日間の違いも許せなくて、後半は価値がほとんど低下しないので、10日間の違いなんて許せてしまうっていうことですね。

 

 

なぜ双曲割引が重要なのか?

双曲割引は、人々が将来のリターンやコストをどのように評価するかを理解する上で重要です。

この概念を理解することで、個人や企業は将来の意思決定においてより適切な戦略を立てることができます。また、投資や貯蓄、消費の意思決定においても双曲割引の影響は顕著です。

今回は例で近い10日間と遠い10日間を考えてみましたが、双曲割引の考え方では、「今日と明日」の1日の違いも「明日と明後日」の違いより大きいということになります。そして「1年後の今日と1年後の明日」の違いなんてものはほとんど無いことにもなるわけです。

そのため、私たち人間は将来の禁煙達成よりも、今吸いたいっていう気持ちを優先してしまいます。
将来のローン返済よりも、今、買い物したいって衝動に駆られるし、将来のダイエット成功よりも、今、食べたい!って欲求に屈してしまうこともあるわけです。

つまり人間は、結局のところ「今」を一番大事にする生き物ということになります。

未来の価値を理解し、双曲割引の影響を考えることで、より良い未来を築く手助けとなるでしょう。

今後の意思決定において双曲割引を考慮してみてください。

(参考文献)
ジョージ・エインズリー「誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか」NTT出版(2006)https://amzn.to/47jERGJ

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