アーンド・バリュー・マネジメント

時間管理

アーンド・バリュー・マネジメントとは

アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)とは、計画の進み具合とパフォーマンスを定量的に評価する手法のこと。簡単な計算式でコスト効率と進捗率を一度に把握することができます。

1967年にアメリカ国防総省が制定したものが元になっており、1990年代にアメリカの国家的プロジェクトとともに発展してきました。

日本においても、政府の調達案件においてはアーンド・バリュー・マネジメントを使った管理を行うことを受注の条件とすることが検討されていると言われています。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

「進捗は70%の遅れです!遅れを取り戻すには121%のパフォーマンスが必要です!」・・ってバチっと数字で表現できる人って、カッコいいわぁ・・・

イトケン
イトケン

簡単な計算で導き出せるよ!

 

 

30日間で地下金庫までトンネルを掘る計画例

7月1日から30日間で銀行の金庫まで30mの地下トンネルを掘る計画を見てみましょう。

作業員2人で1日1m掘り進めるので、人件費60万円で30日後の7月30日に完成予定という計画です。

しかし・・・

作業員2人のパフォーマンスが悪く、1日1mを堀り進めることができないことが判明します。

作業開始から10日後の7月10日時点では7mしか進んでいません。

この計画が遅れていることは誰の目にも明らかです。

一体いつになったらトンネルは完成するんでしょうか、そして完成にいくらかかるのでしょうか。

 

 

まずは現時点の状況を整理する

こんな時、アーンド・バリュー・マネジメントを使うと、
進み具合を数字で明確に表すことができます。
そしてさらに、計画の今後の予測も立てることができてしまいます。

ポイントは、測定時点ですべてを金額に換算するところ。
そのためにこの4つの指標を使います。

・BAC (Budget At Completion)
 総予算のこと
・EV (Earned Value)
 完成した部分の価値のこと
・PV (Planned Value)
 計画で予定されていたコストのこと
・AC (Actual Cost)
 実際にかかったコストのこと

さっそくこの4つの指標で7月10日時点の計画の状況を見てみましょう。

BAC(総予算)は、日給1万円の作業員を2人雇って30日間で終わらせる計画でしたので60万円になります。

EV(完成した部分の価値)を考えてみましょう。ここまで7mトンネルを掘り終えています。これは1日2万円の人件費を7日かけて掘ることができる長さになります。つまり、出来高は14万円になります。

それではPV(計画で予定されていたコスト)はどうでしょうか。当初計画では7月10日までの10日間に必要とされる人件費は20万円でした。

AC(実際にかかったコスト)も、7月10日までの10日間にかかった人件費は20万円になります。

7月10日時点のこの計画の状況は上記のとおり。

パッと見、7mしか掘れてないので、スケジュールは遅れていますよね。

コスト面では、7月10日時点では計画通り20万円で収まっており、今のところ予算オーバーはしていないようですが、・・でもこの20万円で10m掘るはずだったんですよね・・。

 

 

現状をスケジュールとコストの両面から分析する

では、さらにスケジュールとコストの両面で分析を進めてみましょう。簡単な計算式を使います。

スケジュール:
・SV(Schedule Variance) 
 EV-PV スケジュール差異 
・SPI(Schedule Performance Index) 
 EV÷PV スケジュール効率指数

コスト:
・CV(Cost Variance) 
 EV-AC コスト差異
・CPI(Cost Performance Index) 
 EV÷AC コスト効率指数

この計画の7月10日時点でのSV(スケジュール差異)をみてみましょう。
EV-PVで計算できるので、14-20=-6になりました。
現時点では6万円分のスケジュールが遅れているということになります。

SPI(スケジュール効率指数)は、EV÷PVで計算できます。
14÷20=0.7なので、現時点のスケジュールの効率は70%ということになりますね。

コストも同じように計算してみます。7月10日時点では当初予定通りに見えますが・・・
CV(コスト差異)は、EV-ACで計算できるので、14-20=-6。
コスト面でも6万円分足りない計算になります。

CPI(コスト効率指数)は、EV÷ACなので、14÷20=0.7です。
1を下回るということはコストをオーバーしていることを意味しています。

 

 

今後の予測を立てる

この計画は今後どうなるのか、まずはお金の面からみてみましょう。

7月10日までに7mトンネルを掘ったので、残りは23mです。

当初計画では1m掘るために1日を必要とし、人件費も1万円/日の作業員2人が必要でしたので、残り23日、あと46万円あればトンネルの完成ができるように思えますが・・・

この10日間の作業員のパフォーマンスを考慮するととても46万円で完成するとは思えません。

これまでの低パフォーマンスの作業が続くことを前提とするならば、以下の計算式を使って残りのコストを導きます。

ETC(Estimate To Completion)
 (BAC-EV) ÷ (CPI×SPI)  
残作業コスト見積り
※この低パフォーマンスが続く前提の計算式です。

(参考)
コスト面のみ低パフォーマンスになる場合
(BAC-EV) ÷ CPI
当初計画通りのパフォーマンスになる場合
BAC-EV

ETC(残作業コスト見積り)は、(BAC-EV) ÷ (CPI×SPI) で計算できます。

今回ケースでは、(60-14)÷(0.7×0.7)=93万8775円 という結果になりました。

このままのペースを続けていると、残りの23mを掘るのに93万8775円がかかるということです。

あれ・・もともと60万円の予算でしたよね・・現時点で見込まれる総予算は以下の計算式ではじき出せます。

EAC(Estimate At Completion)
ETC+AC 完成時総コスト見積り

EAC(完成時総コスト見積り)は、ETC+AC。 
このままだと最終的には93万8775円+20万円=113万8775円になってしまうということです。

そして、この93万8775円というのは日給1万円の作業員2人分の人件費でした。
93万8775円を2で割ると46。
トンネルは7月10日から46日後の8月25日に完成する見込みです。

 

 

なにがなんでも期日に完成させるには

ここまで、なんだかややこしい計算をしているようですが、最初の4つの指標をこねくり回しているだけです。それだけでいろんなことが見えてくるわけです。

さて、どうやらトンネルの完成は8月25日まで遅れてしまうようです。

でも、絶対に7月30日までに完成させたい場合は、どれだけ頑張らなくてはいけないんでしょうか。

ここでもう1つ計算式をご紹介します。

TCPI(To Complete Performance Index)
(BAC-EV)÷(BAC-AC)
残作業効率指数

TCPIは、残りの作業をなんとか予算内に収めるために達成されるべきパフォーマンスを表しています。計算式は (BAC-EV)÷(BAC-AC)なので、今回のケースでは (60-14)÷(60-20)=1.15になります。

これにより、2人の作業員のパフォーマンスを115%まで上げることで遅れを挽回し、7月30日の期日に間に合うという計算になります。

(参考文献)
A Guide to the Project Management Body of Knowledge, Project Management Institute

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