気分一致効果とは
気分一致効果(Mood congruency effect)とは、特定の感情状態にある時、その感情に一致する種類の記憶を思い出しやすくなるという現象のこと。
例えば、幸せな時には幸せな記憶が、悲しい時には悲しい記憶が、より簡単に脳に浮かぶといったものです。
また、楽しい気分の時は楽しい出来事を、悲しい気分の時は悲しい出来事を、より記憶しやすくなったり、注意が向きやすくなります。
気分と記憶には繋がりがあるんだね♪
失恋時に失恋ソングが心に染みるのも、このせいだよ。
気分一致効果のメカニズム
私たちの記憶は、ただ過去の出来事を保存するだけのものではありません。
実は、私たちの感情状態が、どの記憶を思い出すかに大きな影響を与えています。
感情と記憶は脳内で密接に関連しています。
特に、感情を処理する脳の部分と、記憶を保存する脳の部分が連携して動作するため、私たちの感情状態は記憶にアクセスする際の「フィルター」の役割を果たします。
心理療法への応用
気分一致効果は、心理療法の分野で非常に有用です。特に、クライエントの現在の感情状態を理解し、それに合わせた治療アプローチを取る際に役立ちます。
治療における感情の役割
患者の感情状態は、治療過程での進展に大きく影響します。例えば、患者がネガティブな感情に囚われている場合、彼らはネガティブな記憶や考えに集中しやすくなります。これを理解することで、心理療法士は患者の感情状態を改善するための戦略を立てることができます。
ポジティブな記憶の活用
患者がポジティブな感情状態にある時、治療士はポジティブな記憶や体験を思い出させることで、さらにその状態を強化することができます。これにより、患者は自己効力感や希望を感じ、治療に対するモチベーションが向上する可能性があります。
ネガティブな感情の転換
逆に、患者がネガティブな感情に満ちている場合、治療士はこの感情を認識し、それを転換する手助けをすることができます。例えば、ネガティブな感情に関連する記憶を扱いつつ、それを新しい、よりポジティブな視点から見直す作業を行うことで、患者の感情的な癒しを促進することができます。
気分一致効果は、私たちの日常生活や心理療法において重要な役割を果たします。
私たちの感情は、記憶の思い出し方を左右し、私たちの現在の気分や将来の行動に影響を与えるのです。
この現象を理解することで、自分自身や他人をより深く理解する手助けとなるでしょう。
(参考文献)
伊藤美加「感情状態が認知過程に及ぼす影響」風間書房(2005)https://amzn.to/3NS1n2y
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