ナラティブ・アプローチ

メンタルヘルス

ナラティブ・アプローチとは

ナラティブ・アプローチ(Narrative approach)とは、相談相手や患者などを理解する際に、相手の語る物語を通して解決法を探る手法のこと。

こちらから解決策をアドバイスするよりも、相手の言葉や考えには無意識に「自分自身の物語」が刷り込まれています。これらの物語は、経験、感情、アイデンティティを形作る重要な要素です。

ナラティブ・アプローチとは、このような個々の物語を通じて人間の心理や行動を理解し、分析する手法です。

 

法則うさぎ
法則うさぎ

友達と気ままにお喋りしてたら、問題解決の糸口が見つかることあるよね。

イトケン
イトケン

自分の言葉で、自分の物語を語ることで、自分の進む道が見えてくるってやつだ。

 

 

キャリアコンサルでの応用

例えば、ある失業した中年男性がいます。

彼は現在の状況を「失敗した人生」と捉え、自己評価が低下しています。

ナラティブ・アプローチでは、彼のこの「物語」に焦点を当てます。

彼の経験、彼がどのようにその状況を物語として語るかに注目するのです。このアプローチは、彼の経験を単なる出来事としてではなく、彼自身の物語として扱います。

ナラティブ・アプローチの鍵は、「物語の再構築」にあります。

カウンセラーは彼に人生における肯定的な側面や成功体験に焦点を当てるよう導きます。例えば、過去の成功体験や困難を乗り越えた経験などです。

これにより、彼の「失敗した人生」という物語は「困難を乗り越えてきた強い人生」という新しい物語に置き換わるかもしれません。

 

 

教育分野での応用

教育の現場でもナラティブ・アプローチは有効です。

例えば、学校でいじめに遭っている子供がいたとします。この子供は「僕はいつも犠牲者だ」という物語を持っているかもしれません。

教師やカウンセラーは、その子供に他の物語を探求させることができます。

「いじめに立ち向かった勇気のある瞬間は?」や「友達と楽しく過ごした時の話は?」といった具体的な質問を通じて、その子供の自己認識を変える手助けができるのです。

 

 

ナラティブ・アプローチの実践方法

ナラティブ・アプローチでは、相談者がもともと認識している自身の物語のことを「ドミナント・ストーリー」と呼び、新たに構築する物語を「オルタナティブ・ストーリー」と呼びます。

このオルタナティブ・ストーリーの構築には、相談者の声に耳を傾けたり、質問したりするいくつかの段階が存在します。

ステップ1 ドミナント・ストーリーのヒアリング

対話の開始
安心感を持って話せる環境を作り、相談者が自由に話せるように促します。

物語の探求
相談者の現在の物語、特に彼らの生活やアイデンティティに影響を与えているドミナント・ストーリーに焦点を当てます。この物語はしばしば相談者の問題や悩みを反映しています。

詳細な質問
相談者の物語を深く掘り下げるために、具体的かつ開かれた質問をします。例えば、「その経験はあなたにどのような影響を与えましたか?」や「あなたが直面した挑戦についてもっと教えてください」といった質問です。

ステップ2 ドミナント・ストーリーの分析

物語の分析
相談者が語った物語を共に分析し、その中に現れるパターンやテーマを明らかにします。

限界の認識
ドミナント・ストーリーが相談者の見方や行動にどのように影響を与えているかを理解します。この物語が相談者の可能性や選択肢をどのように限定しているかを認識します。

ステップ3 オルタナティブ・ストーリーの発見

隠れた物語の探索
相談者の物語の中で過小評価されたり、見過ごされたりしている体験や側面、オルタナティブ・ストーリーを探ります。

新しい視点の提供
相談者が自身の経験を異なる角度から見ることができるよう、新しい視点や質問を提供します。例えば、失敗の経験を学びや成長の機会として捉え直すよう導くことができます。

ステップ4 オルタナティブ・ストーリーの構築

新しい物語の形成
相談者と共に、発見されたオルタナティブ・ストーリーを基に新しい物語を形成します。この新しい物語は、相談者の希望や目標、強みを反映しています。

行動計画の策定
新しい物語を実生活に適用するための具体的な行動計画を立てます。これには、新しいスキルの習得、新しい環境への露出、または異なる行動パターンの試みなどが含まれることがあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました